筋膜調整は身体にどんな変化を起こすのか?
前回のコラム「知っておきたい、腱鞘炎治療に欠かせないの筋膜の存在とは?」では、腱鞘炎治療においてとても重要な筋膜についてお伝えしました。
何となくでも筋膜について知っていると、治療効果をより感じる事ができるかと思いますので、そちらのコラムも是非ご覧ください。
さて今回は、腱鞘炎治療においてどのように筋膜に介入していくかについてご紹介していきたいと思います。
ですが、その前にまずは筋膜調整によって身体に何が起こるのか、お伝えしていきます。
前回のコラムでも少し触れましたが、筋膜に歪みが生じると、筋膜に埋め込まれた様々なセンサー(痛みのセンサー、圧や触覚のセンサー、筋肉の緊張を感知するセンサー、動きを感知するセンサーなど)の機能にも障害が生じてしまいます。
そこで筋膜調整によってその筋膜の歪みを解消すると、各種センサーの機能を取り戻す事が出来ます。
それらのセンサー機能が正常になると、センサーの異常によって生じていた痛みや異常感覚(痺れや過敏性)が無くなります。
また同様に筋肉の緊張と動きのフィードバックが正常になると、協調の取れた正常な筋出力が得られるため、動きや姿勢が改善されます。
このような原理によって、筋膜の歪みを解消する事で痛みを改善したり、過剰な負荷を減らしたり、協調の取れた動きや姿勢を取り戻す事が、筋膜調整の最大の目的となります。
そして腱鞘炎治療においても、この感覚器の機能を正常化させる事が、痛みを取り去るための根本的な解決に必要になります。
どういう治療方法なのか?
それでは具体的に筋膜調整についてお話し致します。
治療手順は大きく分けて以下の通りに行っていきます。
①問診
②運動検査
③触診検査
④治療
⑤セルフケア方法の指導
⑥注意事項について
と、なります。
一つずつ説明していきます。
①問診
問診は筋膜調整においてとても重要な事項になります。
詳しくは別のコラムにも記載していますが、筋膜の歪みは過去の「不動」状態や手術などにより形成されてしまうので、過去に何が身体に起こっていたか、という事をしっかりと把握する必要があります。
過去の筋膜の歪みが、筋膜を通して別の部位でカバーしていく結果、前腕や手、指周りの筋膜の歪みを引き起こし、その部分の感覚器(痛みのセンサー)にも異常が起こります。
このメカニズムによって腱鞘炎の痛みが起こります。
具体的にお聞きする事は、
関節や腕、脚などを固定していた事があるか?
身体のどこかを手術をした事があるか?
何回も繰り返し痛めているか?
怪我や障害があった事はあるか?
長い間、痛みがあった部分はあるか?
いつも繰り返す動作や姿勢はあるか?
内臓や頭顔面部の症状が過去にあったか?
と言った事です。
一見腱鞘炎には全く関係なさそうな過去の状況も、現在の痛みにつながっている事は良くあります。
むしろそう言ったケースがほとんどです。
特にこう言った過去の状況が、腱鞘炎の原因になっている根本的な、歪みのある筋膜を見つけ出す手がかりとなってきます。
②運動検査
この検査では、問診によって予想されるいくつかの問題部位に対して、6種類の動作を行なって行きます。
どの動きに問題があるか、あるいはかばっていないかどうかなどを見ていき、予想される問題部位を絞っていきます。
またこれが運動検査の最も重要な意義ですが、治療前に最も痛む動作を確認し、その後一ヶ所ずつ治療するごとにその動きを再度行なってもらう事で、治療効果の判定をします。
動きや痛みが軽減していれば、そのポイントは根本的な原因の一つであった事が分かり、治療の方向性を確実なものとする事が出来ます。
今回のコラムでは筋膜調整の目的と、具体的な方法について少しお話してきました。
次回のコラムでは、筋膜調整の肝となる触診検査や具体的な治療についてご紹介していきたいと思います。