筋膜調整法に出会う前に行っていた鍼治療とは?
これまでのコラムでは、腱鞘炎の本当の原因は筋膜の歪みにある事、そしてその治療法や筋膜の事などについてお伝えしてきました。
私の行なっている筋膜調整法は30年ほど前にイタリアの理学療法士が開発し、体系化されて現在に至ります(まだまただ進化しています)。
日本に入ってきたのはまだここ数年の事です。
私は理学療法士の免許も持っていますが、この方法に出会うまでは鍼灸師として臨床を行なっていたため、腱鞘炎治療も鍼灸で行なっていました。
その鍼灸治療は主にトリガーポイント鍼治療と中医鍼灸を行なってきました。
腱鞘炎に対して筋膜調整を行うようになって分かって来た事ですが、これまで行ってきたトリガーポイント鍼治療と中医鍼灸の良い部分は、筋膜調整法と共通していると思います。
しかしそれらの鍼治療と筋膜調整法との大きな違いも存在します。
それが腱鞘炎治療を左右する大きなファクターになります。
今回のコラムでは、まずはこれまで行っていたトリガーポイント鍼治療と筋膜調整の違いについてお伝えしていきます。
トリガーポイント鍼治療と筋膜調整の違いとは?
トリガーポイントとは、簡単に言うと発痛点であり、そのポイントが形成されると痛みが現れてきます。
腱鞘炎に関しても前腕や手首周り、そして腱にトリガーポイントが形成される事によって起こると考えられているため、そのトリガーポイントを鍼にて解消していく、という治療になります。
そのポイントも1ヶ所とは限らず、そのすぐ近くにいくつも連なって形成されている事が普通ですので、狭い範囲に何本もの鍼を打ちます。
実はこのトリガーポイント鍼治療は筋膜調整法と共通している部分もあり、そしてまた違う部分もあります。
①共通点
共通している部分とは、関連痛(再現痛)が出る事、筋膜上に存在する事の2点があります。
関連痛とは、治療を行っている部分とは違う部分に痛みや重だるさが現れるという現象です。
鍼治療では「響く」とも言います。
特に現在抱えている痛みと、同じ部位に同じ質の痛みが現れる場合、それを「再現痛」と言い、再現痛を出すトリガーポイントは症状の原因の一つとして重要です。
筋膜調整においてもこの関連痛や再現痛を引き起こす筋膜の歪みを重要視していて、治療においても優先順位が高いポイントになります。(必ず治療するとは限りませんが、、、)
もう一つの共通点である、筋膜上にあると言うのはそのままなのですが、トリガーポイントも筋膜の歪みも共に筋膜上にあるポイントです。
②相違点
逆にトリガーポイント治療と筋膜調整との違いは、「繋がりが無い」と言う点です。
トリガーポイントは症状に関連するポイントは、基本的には関連痛や再現痛を引き起こすある一部分やある範囲に存在していると捉えるため、その他の部位との繋がりや、再現痛などを引き起こさないポイントはあまり重要視しません。
しかし筋膜調整の場合、関連痛や再現痛を引き起こすポイントはもちろん重要視しますが、そことはまた別の部分に形成された筋膜の歪みなども考慮していきます。
なぜならそれらは繋がっていて互いに影響を与えるからです。
例え関連痛が現れない筋膜の歪みがあったとしても、根本的な原因になっている事があるため、その場合にはその部分も治療を行います。
ですのでトリガーポイントでは繋がりを考えず、あくまでもある範囲に存在する再現痛を引き起こすポイントしかアプローチしないため、そのポイントを形成してしまう原因の部位の存在にまで介入する事はありません。
そのためあくまでも局所的治療となってしまい、腱鞘炎の改善に時間がかかったり、なかなか痛みが変わらない事も見られます。再発も多く見られます。
筋膜調整では局所のポイントだけではなく、筋膜の歪みの「繋がり」を考えるため、大元の原因がどこにあるか、丁寧に触診し、大元の部分から治療していきます。
それによって局所のポイントが緩み痛みが無くなったり軽減する事もよくある事です。
だから改善率が段違いに高いのです。
またトリガーポイント鍼治療では数mm間隔で数本打ったりもします(再現痛が出る限り、それを追って刺鍼部位を広げていきます)が、筋膜の歪みは1円玉から500円玉大の広さがあるため、とても鍼のみでは緩め切れません。
そう言った事も、腱鞘炎が完治しない治療である原因の一つであります。
さて、長くなってしまったのでひとまず今回のコラムでは、トリガーポイント鍼治療と筋膜調整との差についてお伝えしました。
次回のコラムでは、さらに以前に行っていた中医鍼灸と筋膜調整との違いについてお伝えしていきます。