中医鍼灸と筋膜調整法の違いとは?
前回のコラムでは、これまで腱鞘炎に対する治療として行っていたトリガーポイント鍼治療と、今行なっている筋膜調整法との違いについてお伝えしました。
今回はこれまで行なっていたもうひとつの治療法である、中医鍼灸との違いについてお伝えしていきたいと思います。
中医鍼灸とは、中国伝統医学をベースとした鍼灸法です。
気や血、陰陽五行という言葉は、もしかしたらご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。
中医鍼灸では、身体や精神の源である気・血・水・精と言った物質、肝・心・脾・肺・腎を始めとする五臓六腑の状態を、陰陽五行に基づいて分類していきます。
その診断に問診はもちろん、脈や舌、お腹の状態をチェックします。
そしてその身体の状態によって治療するツボを決めて行きます。ツボは五臓六腑を始め全身に分布する経絡の上に存在するとされています。
この中医鍼灸ですがトリガーポイント鍼治療と同様に、筋膜調整法との共通点があり、そしてまた違う点もあります。
①共通点
一番の共通点は、中医鍼灸の経絡と筋膜の繋がりが一致する部分が多いという点です。
筋膜というのは全身に分布していますが、一定の繋がりがあり、その繋がりに沿って筋膜の歪みが広がっていきます(痛みなどの症状を出さないように、大元の筋膜の歪みを代償して末端部の筋膜を歪ませます)。
一方、中医鍼灸で考える経絡というのも何本も存在しています。
より重要な流れは片側に12本ずつ、正中部に2本、計14種類あります。
その上にツボが多数存在しています。
これら経絡の流れが、筋膜の繋がりと一致する事が多く、またツボの存在する部分が筋膜の歪みが起こる部分と一致します。
また内臓の不調(例えば肺などの呼吸器系、心臓などの循環器系など)によって起こった筋膜の歪みが、体表の筋膜の歪みとして出てくる事もあります。
中医鍼灸でも経絡にはそれぞれ五臓六腑が関連していて、例えば肺などの呼吸器の不調があると、手の肺経という経絡上に痛みや不調が出る事があります。
このようにこれら2つの治療法では、筋膜の繋がりと経絡、ツボと筋膜の歪み、そして内臓不調の反映などの共通点があるんです。
②相違点
筋膜調整法と中医鍼灸との最大の相違点は、治療部位の範囲です。
鍼では太さの違いは多少ありますが、基本的にひとつのツボに1本ずつ打っていきます。
ですが筋膜の歪みは1円玉〜500円玉くらいの大きさがあります。
ですので筋膜調整法では、点ではなくその面を緩めていく事になります。
この範囲の差が、治療効果の差になる一つの要因だと思います。
また筋膜調整法では、治療中は常に歪みに触れながら行っていくため、筋膜の状態を常に感じる事ができ、歪みが解消されるととても滑らかになり引っ掛かりが無くなる、という事も分かります。
鍼灸だと鍼は打った後一定時間置いたままにするので、当然そのツボがどう変化していくかを感じる事は出来ません。
鍼を抜いた後も筋肉の硬さや圧痛を確認する程度で、当然筋膜の状態をみることはありません。
なので治療後のツボの変化が分からないのです。
そもそも中医鍼灸はほとんど触診を行いません。
身体の状態によってこのツボを治療として使うというのがほぼ決まっているので、ほとんど触る事なくそのツボに打っていくという感じです。
なので本当にそこが治療ポイントなのか、その正確性が筋膜調整法との効果の差になってくると思います。
鍼治療と筋膜調整
さて2回に渡って、筋膜調整法とこれまで行なっきたトリガーポイント鍼治療、中医鍼灸との共通点や相違点についてお伝えして来ました。
ざっくり言ってしまうと、トリガーポイント鍼治療と中医鍼灸のいいとこどりをしたのが筋膜調整法に近いかと思います。
しかしそれでも決定的な差があります。
それはしっかり細かく触診する事で原因部位と治療部位を把握する事、そしてそのポイント(10円玉〜500円玉大)の変化を把握しながら範囲全体を緩める事、このような違いが、筋膜調整法と鍼治療の効果の差に現れてきます。
つまり筋膜調整法の方が曖昧さが少なく、確実な治療になるという事です。
もしこれまで鍼による腱鞘炎治療を受けてきて、あまり良くならない方、再発してしまう方は、ぜひこのコラムをご覧いただき、その差を知って頂けたらと思います。