過活動膀胱には筋膜調整が必要
これまで2回のコラムで過活動膀胱の一般的な原因と治療法、そしてその治療法の問題点などをお伝えしてきました。
膀胱の過剰な収縮を和らげる抗コリン薬の服用や、ケーゲル体操と呼ばれる骨盤底筋のトレーニングなどが主な治療法として行われるのですが、それぞれ問題点がある事はお伝えした通りです。
実際に効果のある方もいますが、ほとんど効果を感じられない方も多くいらっしゃいます。
なぜならそれは「筋膜」に原因があるにも関わらず、「筋膜」の調整を行わないままそのような治療を行ってしまっているためです。
一般的な治療法で効果を感じられない場合、まずは筋膜の調整が必要となります。
今回のコラムでは具体的な筋膜の調整方法をお伝えする前にまずは筋膜についての概要をお伝えしていきたいと思います。
なぜなら筋膜の事が分からないと、具体的にどのように過活動膀胱と関連してくるかが想像しずらいためです。
筋膜とは?
まず筋膜とは筋肉それぞれを包んでいる膜ですが、実はその上には全身を一包みしている大きな筋膜も存在します。
イメージとしては筋肉を包む筋膜がみかんの皮で、実が筋肉だと言う感じです。
そしていくつものみかんを入れているネットが全身を一包みしている筋膜に相当します。
みかんのネットの一部を引っ張ると、ほかの部分が歪むのがわかると思いますが、これは身体でも同じ事が起こり、どこかの筋膜が硬くなると他の筋膜を引っ張って歪みを生じます。
そして身体がみかんと違うのは、このネットとみかんの皮も連結している、と言う事です。
どこかの筋膜の硬さによって生じた歪みは一包みしている表層の筋膜だけでなく、ここの筋肉の筋膜をも歪ませてしまいます。
また筋膜の中には痛みや圧、筋肉の伸張や関節の動きを感知するセンサーが埋め込まれています。
そのため筋膜が歪んで硬くなるとこれらのセンサーが誤作動を起こし、痛みを感じたり、筋肉の協調的な動きが妨げられ関節に負荷がかかったりしてしまいます。
多くの整形外科領域の慢性痛は、このような原理で痛みを誤って「感知」しているのです。
この原因を見落としているために、骨や関節をいじったり、単に痛みのある部分の治療をしても良くならなかったり再発してしまうのです。
内臓にも筋膜がある
ではこれらの筋膜と過活動膀胱が具体的にどのように関わっているのか、と言うところをご説明します。
実は膀胱に限らず内臓全般も筋肉と同様に筋膜構造が認められています。
先程のみかんの例えで言うと、みかんの皮が個々の内臓を包む筋膜、実が内臓です。
そして内臓全体を一包みする筋膜がみかんのネットに相当します。
このネットとみかんの皮は連結いるのも筋肉と同様です。
やはりどこかの筋膜が硬くなると引っ張られるために歪みが生じてしまいます。
ところで筋肉の筋膜の中には痛みや圧、筋肉の伸張や関節の動きを感知するセンサーが埋め込まれていました。
内臓の筋膜の場合、痛みのセンサーの他に自律神経の末端が埋め込まれている、という部分が筋肉の筋膜とは違う部分です。
自律神経というのは交感神経と副交感神経があり、脳からの指令が脊髄を通ってそれぞれの内臓に行って機能を調整する、という事はご存知かもしれませんね。
しかし自律神経による内臓の調整機能は脳からの指令だけではなく、個々の内臓、そして内臓同士のやりとりによっても行われます。
それを可能にしているのが内臓を包む筋膜であり、そこに埋め込まれている自律神経です。
この筋膜と自律神経が個々の内臓の状態を感知し調整しつつ、他の内臓とも連携して全体の状態を調整します。
逆に言うとどこかの筋膜に硬さがあって全体が歪むと、この自律神経の調整機能も破綻し、結果として内臓の不調が出てきてしまいます。
あるいは内臓の不調や炎症などがきっかけで内臓の筋膜に硬さが生じ、筋膜の歪みによって他の内臓の機能障害を引き起こす事もあります。
そしてこれが膀胱に起こると過活動膀胱や排尿痛などの問題が現れる、と言う事になります。
また長くなってしまったので、今回はこの辺で終わりたいと思います。
次回のコラムでは治療法に必要な筋膜の詳細と、筋肉と内臓の筋膜間の連携についてお伝えしていきたいと思います。