逆流性食道炎とは
逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで発生します。通常、胃酸は食道と胃の間にある下部食道括約筋によって食道に逆流することが防がれていますが、この筋肉が弱くなったり、適切に閉じなくなったりすると、胃酸が食道に逆流しやすくなります。胸焼けや酸味のある液体が喉に上がってくるなどの不快な症状を引き起こします。鍼灸治療は、この状態に対する補完的な治療法として注目されています。
症状
胸焼け
胸の中央部に感じる焼けるような痛みや不快感。食後や横になると悪化することが多いです。
逆流
胃酸や食べ物が口まで逆流してくることがあります。
嚥下障害
食べ物や液体を飲み込むときに痛みや違和感を感じることがあります。
慢性の咳
特に夜間に悪化することがあり、喉の違和感や喉の痛みを伴うことがあります。
原因
下部食道括約筋の機能低下
食道と胃の境目にある筋肉が弱くなると、胃酸が食道に逆流しやすくなります。
肥満
体重が増えることで腹圧が高まり、胃酸の逆流を引き起こすことがあります。
食生活
高脂肪食、辛い食べ物、チョコレート、カフェイン、アルコールなどが逆流を引き起こすことがあります。
喫煙
タバコの煙が下部食道括約筋の機能を弱めることがあります。
妊娠
妊娠中はホルモンの変化と子宮の圧迫により逆流しやすくなります。
逆流性食道炎と東洋医学
逆流性食道炎は東洋医学的観点からみると、胃の機能の他にも、五臓六腑のうち肺と脾の機能を高めることも大切となります。
東洋医学では、「胃」と「脾」は兄弟関係にあります。そして、「肺」は「脾」の働きに助けられて育つ関係にあります。
鍼灸治療の目的
鍼灸治療は、体内のエネルギーの流れ(気)を調整し、体のバランスを回復させることを目的としています。
逆流性食道炎に対する鍼灸の効果
胃酸分泌の調整
胃の機能を調整し、胃酸の過剰な分泌を抑制します。これにより、食道への酸の逆流を減少させることができます。
自律神経の調整
逆流性食道炎はストレスや不安によって悪化することがあります。鍼灸では自律神経系のバランスを調整し、ストレスを軽減することで症状の改善を図ります。
消化機能の向上
全体的な消化機能の向上によって、食物が胃から腸に適切に移動するようになり、胃の内容物が逆流しにくくなります。
代表的なツボ
逆流性食道炎の治療において使用される代表的な経穴には以下があります。
中脘(ちゅうかん)
胃の機能を強化し、胃酸の分泌を調整します。
位置:腹部の中心辺りで、臍から指四本分上にあります
足三里(あしさんり)
消化機能を改善し、全身のエネルギーの流れを促進します。
位置:膝の外側でお皿のくぼみから指四本分下にあります
膻中(だんちゅう)
呼吸器系と消化器系のバランスを調整します。
位置:胸の中央辺りで、両乳頭を結ぶ線の中間にあります
天枢(てんすう)
消化器系の不調を改善します。
位置:臍の左右にあり、臍の中心から指二本分外側にあります