不安神経症とは
不安神経症(不安障害)は、強い不安感や恐怖感が持続的に続く精神的な状態を指します。この障害は日常生活に深刻な影響を与えることがあり、軽度な不安から激しいパニック発作に至るまで、多様な症状が現れます
不安神経症にはいくつかの種類があります。一般的なものとしては、全般性不安障害(GAD)、パニック障害、社交不安障害(社交恐怖症)、強迫性障害(OCD)、および特定の恐怖症が挙げられます。それぞれの障害は不安の性質や引き金となる要因が異なりますが、根本にあるのは自律神経やホルモンバランスが崩れて不安や恐怖をうまくコントロールできないことです。
不安神経症の原因
不安神経症の原因は一つではなく、複数の要因が絡み合って発症することが多いとされています。これには、身体的要因、環境的要因、脳の化学的変化、過去のトラウマ経験、ストレスなどが関与しています。
身体的要因
自律神経とホルモンバランスが乱れることで、精神的な情動は不安定になっていきます。よく体と心はつながっているといいますが、交感神経が優位になり、アドレナリンなどのホルモンが分泌されると心拍数が上がります。そうすると気分が高揚して外向性や攻撃性が増します。また、極端に自律神経が働くことで精神面も大きく動揺します。そのため普段は気にならないことにも不安や心配に感じることが増えていきます。
環境的要因
幼少期の家庭環境や学校生活、職場のストレス、社会的なプレッシャーなど、外的な環境要因も大きく影響します。例えば、過度な期待を受けることや、長期間にわたるストレスにさらされることで、不安神経症が引き起こされることがあります。また、虐待やいじめ、失業、離婚などの重大な出来事も、発症のリスクを高める要因です。
不安神経症の病院での対処
病院では薬物療法や心理療法が治療法として選択されます。
1. 薬物療法
薬物療法では、不安を和らげるために抗不安薬や抗うつ薬が処方されることが一般的です。抗不安薬は即効性があり、急性の不安発作に対して効果を発揮しますが、長期使用には依存性のリスクがあります。一方、抗うつ薬は長期的な不安の改善に役立ちますが、効果が現れるまでに数週間を要することがあります。
2. 心理療法
心理療法としては、認知行動療法(CBT)が広く用いられています。CBTは、患者が不安を引き起こす思考や行動パターンを認識し、それを現実的で適応的なものに置き換えることを目指します。また、リラクゼーション法やマインドフルネス瞑想も不安の軽減に効果があるとされています。
不安神経症の東洋医学
不安神経症に対する鍼灸治療は、東洋医学の観点から心身のバランスを整え、精神的な安定を図る方法として注目されています。東洋医学では、不安やストレスは「気(エネルギー)の滞り」や「血の不足」、「陰陽の不調和」といった体内の不均衡が原因とされています。
不安神経症の鍼灸治療
不安神経症に対して鍼灸治療が行われる理由は、鍼灸が体内の自律神経系に働きかけ、ストレス反応を和らげる作用があると考えられているためです。具体的な効果としては以下のものが挙げられます。
1.自律神経の調整
不安神経症の症状は、自律神経のバランスが崩れることが一因とされています。鍼灸は、副交感神経を刺激してリラクゼーション効果を促し、心身を落ち着かせるのに役立ちます。これにより、不安感や緊張感が軽減され、心が穏やかになることが期待されます。
2.ストレスホルモンの減少
研究によると、鍼治療はストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を減少させる効果があることが示されています。コルチゾールの過剰分泌は、不安やパニックを引き起こす要因となるため、これを抑えることで不安症状を軽減します。
3.気と血の流れの改善
東洋医学では、不安は「気滞(エネルギーの停滞)」や「血虚(血の不足)」によって引き起こされると考えられています。鍼灸は、気と血の流れを良くし、心身の調和を取り戻すことで、不安感を緩和します。
不安神経症で用いる代表的なツボ
1.神門(しんもん)
手首の内側に位置し、心を落ち着かせる効果があります。このツボは、心悸亢進(心臓がドキドキすること)や不安感、イライラに対して用いられます。
2.百会(ひゃくえ)
頭頂部に位置するこのツボは、全身の気を整え、心身のバランスを調和させます。不安感やストレス、頭痛の軽減に効果があるとされています。
3.内関(ないかん)
前腕の内側にあるツボで、心を安定させ、パニックや動悸を鎮める効果が期待できます。また、消化器系の不調にも効果があり、ストレスからくる胃痛や胸のむかつきを和らげます。
4.足三里(あしさんり)
脚の外側にあるこのツボは、全身の気の流れを促進し、免疫力を高めるとともに、不安や疲労感を改善します。
まとめ
鍼灸治療に加え、日常生活の習慣を見直すことも、不安神経症の改善に役立ちます。例えば、規則正しい食事や運動、十分な睡眠、ストレスを軽減する趣味やリラクゼーション方法を取り入れることで、心と体の健康を保つことが可能です。
また、マインドフルネス瞑想やヨガなど、心身をリラックスさせる活動を鍼灸と併せて行うことで、不安をコントロールする力がさらに高まるでしょう。