お腹の不快感やガス溜まり・下痢・便秘、これらの症状は日常的に気にならない弱い程度から、仕事やプライベートが困難になる強いものまで様々です。
病院で検査しても異常の見当たらない過敏性腸症候群について知っていきましょう。

過敏性腸症候群（IBS）とは？

過敏性腸症候群（Irritable Bowel Syndrome, IBS）は、消化器系に異常がないにもかかわらず、慢性的に腸に不快感や痛みを感じる機能性の腸障害です。具体的には、腹痛や腹部の不快感、下痢や便秘、またはその両方が交互に起こるという症状が特徴です。日本でも多くの人がこの症状に悩まされており、特にストレスや生活習慣が原因とされることが多いですが、そのメカニズムは完全には解明されていません。

IBSの症状

IBSの主な症状には、以下のものがあります。

腹痛や腹部の不快感：特に食事後に強く現れることが多く、排便すると緩和することがよくあります。
便通の異常：下痢型（頻繁に緩い便が出る）、便秘型（便が固く、排便が難しい）、混合型（下痢と便秘が交互に起こる）が存在します。
腹部膨満感：お腹が張った感じがすることがあり、特に午後や夜に強くなることが多いです。
症状は一人ひとり異なり、症状の重さや頻度も変わるため、診断が難しい場合があります。IBSは命にかかわる病気ではありませんが、仕事や学校、私生活に支障をきたす疾患です。

過敏性腸症候群(IBS)の原因

IBSの原因は明確には解明されていませんが、いくつかの要因が複合的に絡み合って発症すると考えられています。主な要因として、以下のものが挙げられます。

１．ストレス：心理的なストレスが腸の動きを乱すことが、IBS発症の大きな要因とされています。特に仕事や家庭の問題、対人関係の悩みなどが影響することが多いです。自律神経が影響を受けることで、腸の蠕動運動（腸の収縮）が異常をきたし、下痢や便秘を引き起こします。

２．腸内環境の乱れ：腸内フローラ（腸内細菌叢）のバランスが崩れることもIBSに関与しています。特定の有害菌が増えることで、腸内ガスの発生や炎症を引き起こし、症状を悪化させる可能性があります。

３．食事や生活習慣：高脂肪な食事やアルコール、カフェインの過剰摂取が腸に負担をかけ、IBSを引き起こすことがあります。また、食物繊維が不足することで便通が悪化することもあります。さらに、寝不足や不規則な食事時間などの生活リズムの乱れも影響します。

４．腸の過敏性：IBSの患者は、腸が外部の刺激に対して過敏に反応する傾向があります。例えば、普通の人では問題ない程度の食物やストレスが、IBS患者には強い刺激となり、腹痛や便通異常を引き起こします。

過敏性腸症候群(IBS)の鍼灸治療

IBSの症状は、東洋医学では「気」や「血」の巡りの乱れとして理解され、特に「肝（かん）」や「脾（ひ）」の機能不調が関与していると考えられます。これらの要因が腸の過敏性を引き起こし、腹痛や便通異常などの症状を悪化させるとされています。

鍼灸がIBSに対して効果があるとされる理由はいくつかあります。

１．自律神経の調整： 鍼灸治療は、自律神経を整える効果があります。IBSはしばしばストレスや精神的な緊張が関係し、自律神経の乱れによって腸の機能が過敏になるとされています。鍼灸はリラックス効果が高く、副交感神経を優位にすることで腸の蠕動運動を正常化し、腹痛や下痢、便秘の症状を和らげます。

２．内臓の血流改善： 鍼を使った治療は、内臓の血流を改善することで、腸の働きを活発にし、便通を促進します。これにより、便秘型IBSの改善が期待できるだけでなく、下痢型の症状緩和にもつながるとされています。

３．気血の巡りの調整： 東洋医学では、IBSは「肝気鬱結（かんきうっけつ）」や「脾虚（ひきょ）」といったエネルギーの不調が原因とされています。鍼灸は、これらのエネルギーの流れを整えることで、腸の機能を調和させ、症状の改善を促します。

よく使われるツボ
・足三里（あしさんり）：消化器系全般の働きを助けるツボで、便通の調整に効果があります。
・中脘（ちゅうかん）：胃腸の機能を整え、消化不良や腹痛を和らげるツボです。
・神門（しんもん）：ストレスや緊張を緩和するツボで、リラックス効果があります。
・太衝（たいしょう）：肝の気の巡りを整え、ストレスによる胃腸の不調に効果的です。

まとめ

過敏性腸症候群に対する鍼灸治療は、腸の過敏性を抑え、自律神経を調整することで症状を緩和する効果が期待されています。ストレスの多い現代社会において、薬に頼らずに体質改善を目指す鍼灸は、自然で包括的なアプローチとして、多くのIBS患者にとって有効な選択肢となる可能性があります。