入眠障害とは?
入眠障害(にゅうみんしょうがい)は、文字通り「眠りにつくことが難しい」という症状を指します。寝たいと思ってもなかなか寝付けず、布団に入ってから何時間も経ってしまうことがあります。誰しも一度は経験したことがあるかもしれませんが、これが頻繁に続くと日常生活に悪影響を及ぼします。
入眠障害の主な原因
入眠障害はさまざまな原因によって引き起こされます。以下は代表的な要因です。
【ストレスや不安】
ストレスや心配事が多いと、脳が興奮状態になり、リラックスして眠ることが難しくなります。特に仕事や学校、人間関係に関する悩みがあると、布団に入ってもそのことを考え続けてしまうことがあります。これが入眠障害の大きな原因の一つです。
【不規則な生活リズム】
生活リズムが乱れていると、体内時計がうまく機能せず、眠るべき時間に眠気が来ないことがあります。特に夜遅くまでテレビやスマートフォンを使ったり、夜勤などで夜に働く生活をしている場合、体が昼夜のリズムを混乱させてしまいます。
【カフェインやアルコールの摂取】
カフェイン(コーヒーやお茶、エナジードリンクなど)やアルコールは、眠りに影響を与える物質です。カフェインは覚醒作用があり、寝る直前に摂取すると脳を興奮させ、入眠を妨げます。一方、アルコールは一時的にリラックス効果がありますが、深い睡眠を阻害し、夜中に目が覚めやすくなります。
【うつ病や不安障害】
精神的な病気が原因で入眠障害を引き起こすこともあります。うつ病や不安障害を持つ人は、心の健康が影響し、眠りにつくのが難しくなる場合があります。特に、うつ病は朝方早く目が覚める「早朝覚醒」も特徴の一つで、質の良い睡眠を取ることが困難です。
【身体的な要因】
例えば、アレルギーや喘息、慢性的な痛み(腰痛や関節痛など)があると、快適に眠ることができなくなります。また、首や肩の筋肉の硬さがあると脳への血流が滞りやすくなり頭の熱が逃げづらくなるため入眠障害につながります。
東洋医学における不眠の原因
洋医学では、人体には「気(エネルギー)」「血(血液や栄養素)」「水(体液)」という3つの基本要素が流れており、これらのバランスが崩れると体調が乱れ、病気が発生するとされています。不眠もその一例です。不眠の原因は個人の体質や生活習慣によって異なり、先にお伝えした内容が一般的ですが、入眠障害の体の中ではこのような原因がみられます。
【心火亢盛(しんかこうせい)】 心(しん)は東洋医学で精神活動を司る臓器であり、心火は心の中にある熱やエネルギーを指します。この心火が過剰になると、精神的に興奮しやすくなり、夜間に心が静まらず眠れなくなるとされています。ストレスや過度な感情の乱れが心火亢盛を引き起こし、不眠につながることがあります。
【肝気鬱結(かんきうっけつ)】 肝(かん)は気の流れを調節する働きを持ち、感情と密接に関連しています。肝気が鬱滞(停滞)すると、ストレスやイライラ、不安感が生じ、夜に心を落ち着けることが難しくなります。特に、感情を抑え込むことが多い人は肝気鬱結の状態に陥りやすく、不眠を引き起こす原因の一つとなります。
【心脾両虚(しんぴりょうきょ)】 心と脾(ひ)は、精神の安定や消化吸収に関わる重要な臓器です。これらが虚(不足)することで、心が疲れやすくなり、精神的な安定が損なわれ、眠りが浅くなります。食事の不摂生や過労が原因となり、心脾両虚を引き起こし、不眠の一因となることがあります。
【腎陰虚(じんいんきょ)】 腎は生命力や成長、発育、老化を司る臓器で、腎の陰(体内の冷やすエネルギー)が不足すると、体に熱がこもり、夜に寝付けなくなることがあります。特に年齢を重ねることで腎陰虚になることが多く、不眠の原因となることがあります。
入眠障害の鍼灸治療
東洋医学では、不眠症の治療に対して「気・血・水」のバランスを整えることを重視します。
特に体内の環境を自動的に調節しているのが自律神経系です。
当院では始めに全身の自律神経を整えたあと、それぞれのお身体の状態に合わせてツボを使っていきます。
<主なツボ>
. 神門(しんもん)
効果:神門は心を落ち着ける効果があり、精神的な緊張を和らげ、心火亢盛の状態を鎮めることで、リラックスした状態を促します。不眠やストレスによる精神的不安に特に効果があります。
2. 百会(ひゃくえ)
効果:精神のバランスを整え、リラックスを促します。特に、精神的なストレスや緊張からくる不眠に効果が期待できます。
3. 三陰交(さんいんこう)
効果:肝・脾・腎の3つの経絡が交わるツボで、これらの機能を補うことで体全体のバランスを整えます。特に、女性の不眠やホルモンバランスの乱れによる不調に効果的です。
4. 安眠(あんみん)
効果:名前の通り、「安らかな眠り」を促すツボです。このツボは、精神を落ち着け、自然な眠気を引き出す効果があるため、入眠障害の治療に広く用いられます。
5. 風池(ふうち)
効果:風池は、頭や首の緊張を緩め、リラックスを促します。頭痛や肩こり、緊張からくる不眠に対して有効です。
まとめ
鍼灸治療は、東洋医学的な視点から入眠障害の根本原因を探り、気や血のバランスを整えることで、自然な眠りを取り戻す方法です。心や体のバランスが乱れることで生じる不眠に対して、体に優しいアプローチを提供します。特に、薬に頼りたくない方や、ストレスや体質が原因で不眠に悩んでいる方には、鍼灸治療は効果的な選択肢となるでしょう。