はじめに
手根管症候群は、手首にある手根管という狭いトンネル状の部分で、正中神経が圧迫されることによって引き起こされる症状のことを指します。手首の圧迫による末梢神経の障害です。
症状
手のしびれや痛み:特に親指、人差し指、中指、および薬指の一部に現れます。
手の力が入らない:握力が低下し、物を落としやすくなることがあります。
手首や手の痛み:手首の内側や手のひらの付け根部分に痛みを感じることがあります。
原因
・手首の繰り返し動作(タイピング、マウス操作など)
・妊娠や更年期によるホルモン変化
・糖尿病や甲状腺機能低下症などの基礎疾患
・手首のけがや炎症
症状の重症度による分類
軽度: 指や手のしびれや痛みが一時的に感じられますが、日常生活に大きな支障はありません。主に夜間に症状が現れることがあります。
中等度: 痛みやしびれが持続し、手の感覚が鈍くなることがあります。物を掴む力が弱まり、手指の不器用さを感じることがあります。
重度: 痛みやしびれが慢性化し、手指の筋肉が萎縮することもあります。特に親指の付け根部分の筋肉が痩せ、日常的な動作が困難になることがあります。
神経伝導速度による分類
軽度神経障害: 神経伝導速度の遅延が軽度で、運動機能には影響が少ない状態です。
中等度神経障害: 神経伝導速度の遅延が顕著になり、感覚の鈍麻や軽い筋力低下が見られます。
重度神経障害: 神経伝導がほとんど行われず、手指の筋力低下や筋萎縮が進行している状態です。
簡易的な検査法
手根管圧迫テスト:手首の真ん中辺りにある手根管部分を指で軽く圧迫して行う検査です。30秒以内に親指から薬指にかけての痺れや痛みが増したら、陽性です。
ティネル徴候:手首の真ん中辺りにある手根管部分を指や検査用のハンマーで軽く叩いて刺激します。親指から薬指にかけての指先にピリピリとした痺れが走った場合、手根管症候群の可能性があります。
ファレンテスト:胸の前で手関節を曲げ、両手の甲を合わせた状態でキープします。約1分間以内に痺れが増してきたら陽性です。
検査結果が陽性の場合は、手根管症候群の可能性が高いと考えられます。
鍼灸治療の効果
痛みの緩和
鍼灸は神経の圧迫によって引き起こされる痛みを和らげる効果があります。鍼の刺激が自律神経や神経伝達物質に作用し、痛みを感じる神経の反応を抑制します。
神経の回復
鍼刺激により血流が促進され、炎症や神経の圧迫による障害を改善します。特に、手首や指に通じる正中神経の働きを正常化することを目指します。
筋肉の緊張緩和
手首周りの筋肉や腱の緊張が正中神経を圧迫することがあるため、筋肉を緩め症状の改善を図ります。
炎症の軽減
お灸や鍼刺激による温熱効果や循環促進効果で炎症を抑え、神経への圧迫を減少させます。