息切れとは、、、
息切れとは、通常よりも呼吸が苦しく感じる状態を指します。普段の活動や運動で特に意識することがない呼吸が、突然浅くなったり、速くなったりして、息苦しさを感じることがあります。一般的には、激しい運動をした後や、高い場所にいるときに息切れが起こることがありますが、日常生活の中で何もしていないのに息切れを感じる場合は、何らかの身体的な問題やストレスが原因であることが考えられます。
息切れの原因
息切れの原因は、身体的な問題と精神的な問題の両方に分類されます。ここでは、代表的な原因について説明します。
運動不足や肥満
運動不足や肥満は、呼吸機能に直接影響を与えます。日常生活の中での活動量が少ないと、心肺機能が低下し、軽い運動や階段の昇り降りでも息切れを感じることがあります。体重が増加すると、心臓や肺に余分な負担がかかるため、呼吸が苦しくなりやすくなります。
呼吸器系の疾患
呼吸器系の疾患は、息切れを引き起こす主な原因の一つです。特に次のような病気がある場合、息切れが顕著に現れます。
【喘息(ぜんそく気)】
道が炎症を起こし、狭くなることで、息を吸ったり吐いたりするのが難しくなる病気です。発作が起こると、息切れや胸の圧迫感を伴います。
【慢性閉塞性肺疾患(COPD喫煙)】
などが原因で肺が損傷し、呼吸が困難になる病気です。特に動いたときに強い息切れが現れることが特徴です。
【肺炎や気管支炎】
呼吸器に感染症が起こり、炎症が生じると、呼吸が浅くなり、息切れを感じることがあります。
心臓疾患
心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割を果たしているため、心臓に問題があると、呼吸にも影響が及びます。心臓疾患が原因の息切れは、特に横になったときや運動したときに感じることが多いです。
【心不全】
心臓が十分に血液を送り出せなくなることで、肺に液体がたまり、呼吸が困難になります。安静にしていても息切れが続くことが特徴です。
【狭心症】
心臓に十分な酸素が供給されないと、胸の痛みや息切れが生じます。特に運動やストレスが引き金になることが多いです。
貧血
貧血は、体内の赤血球やヘモグロビンが不足し、酸素を十分に運ぶことができない状態です。そのため、体が酸素不足を補おうとして呼吸が速くなり、結果として息切れを感じることがあります。貧血による息切れは、軽い運動や階段の昇り降りで特に感じやすくなります。
パニック障害や不安障害
息切れは、精神的な要因でも引き起こされることがあります。パニック障害や不安障害の発作時には、過呼吸が生じ、息切れがひどくなることがあります。この場合、心臓や呼吸器に問題がないにもかかわらず、ストレスや不安が原因で呼吸が乱れます。
【パニック発作】
突然の強い不安や恐怖を感じることで、心拍数が上がり、呼吸が速く浅くなります。息が詰まる感覚や胸の圧迫感が特徴です。
【過呼吸症候群】
強いストレスや緊張によって過呼吸が引き起こされ、息苦しさを感じます。手足のしびれやめまいを伴うこともあります。
アレルギー
アレルギー反応によって気道が狭くなり、息切れが起こることがあります。特に、花粉症やハウスダスト、食物アレルギーなどによる呼吸困難が生じることがあります。アレルギーが原因の場合、息切れとともに鼻水やくしゃみ、目のかゆみなどの症状も見られます。
感染症(COVID-19など)
最近では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)も息切れの原因として注目されています。COVID-19は肺を中心に感染が広がり、重症化すると呼吸困難を引き起こします。また、回復後も「ロングCOVID」として息切れが続く場合があります。
東洋医学における息切れの原因
東洋医学では、息切れは単に呼吸器の問題だけでなく、体全体のエネルギーや臓器のバランスが崩れた結果として現れると考えます。主に以下のような原因が息切れの背景にあるとされています。
【気虚(ききょ)】
「気」とは、生命エネルギーを指します。東洋医学では、体内の「気」が不足すると、全身のエネルギーが低下し、呼吸を十分に行うことが難しくなると考えます。この状態を「気虚」といい、疲れやすさや息切れ、無力感を伴います。特に軽い運動でも息が切れやすく、常にエネルギー不足を感じる場合は、気虚が原因である可能性があります。
【肺気虚(はいききょ)】
肺は呼吸を司る臓器であり、肺気が不足すると、息切れや咳、胸の圧迫感を感じることがあります。「肺気虚」と呼ばれる状態では、特に呼吸が浅くなり、十分に酸素を取り込むことができなくなります。また、外的な刺激に対しても弱くなり、風邪をひきやすい傾向も見られます。
【心気虚(しんききょ)】
心臓は血液を循環させるだけでなく、全身に「気」を送り出す役割も担っています。「心気虚」とは、心臓の機能が低下している状態で、これが原因で血液や気の流れが悪くなり、息切れを感じやすくなります。動悸や胸の痛みを伴うことが多く、精神的な疲労や不安感も影響します。
【血虚(けっきょ)】
「血虚」は、血液が不足した状態を指し、酸素や栄養を全身に十分に供給できなくなります。特に女性に多く見られ、顔色が悪く、めまいや疲労感、息切れが特徴です。貧血に似た症状が出やすく、軽い運動でも息切れを感じることがあります。
【陰虚(いんきょ)】
「陰虚」とは、体を冷やし潤すエネルギーである「陰」が不足している状態です。これにより、体内の熱が過剰になり、呼吸が速くなりやすいです。口渇やほてり、夜間の発汗とともに、息切れが見られることが多いです。
息切れの鍼灸治療
鍼灸治療は、経絡(けいらく)と呼ばれる体内のエネルギーの流れに沿って、特定の経穴(けいけつ:ツボ)を刺激し、気や血の巡りを改善する方法です。息切れに対しては、主に「肺」「心」「脾(ひ)」といった機能を整え、浅い呼吸や疲労感、自律神経のアンバランスを改善を目指します。
施術は全身に行っていきます。
下記は施術に用いる主なツボです。これらに鍼やお灸を行っていきます。
1. 肺を強化するツボ
【天突(てんとつ)】
喉元の中央に位置するツボで、肺の機能を高め、呼吸の通りを良くする効果があります。息切れや咳、喉の違和感に用いられます。
【尺沢(しゃくたく)】
肘の内側にあるツボで、肺気を補い、息切れや喘息に効果的です。気道を開き、呼吸を深める働きがあります。
【太淵(たいえん)】
手首の内側にあるツボで、肺経に属し、肺の気を調整します。咳や呼吸困難、息切れの緩和に使われます。
2. 気を補うツボ
【足三里(あしさんり)】脚にある有名なツボで、全身の気を補う効果があります。消化器系や免疫系にも良い影響を与え、息切れや疲労回復に効果があります。
【気海(きかい)】
おへその下に位置するツボで、エネルギーを充填し、体全体の気を増やす作用があります。気虚による息切れや疲労感を軽減します。
3. 心臓を支えるツボ
【内関(ないかん)】
前腕内側にあるツボで、心臓の機能を調整し、動悸や不安感、息切れに効果があります。精神的なリラックス効果もあり、心気虚に伴う息切れに有効です。
【神門(しんもん)】
手首の内側にあるツボで、心を安定させ、動悸や不安を和らげるために使用されます。心気を補うことで、心臓の働きを助け、息切れを軽減します。
4. 血を補うツボ
【三陰交(さんいんこう)】
足首内側にあるツボで、血を補う効果があり、貧血や血虚による息切れに効果的です。特に女性の健康を整えるために頻繁に使われるツボです。
膈兪(かくゆ): 背中に位置し、血の生成と循環を促す作用があり、血虚による息切れや貧血に用いられます。
5. 陰虚を改善するツボ
【腎兪(じんゆ)】
背中にあるツボで、腎の機能を補強し、体の潤いを回復させます。陰虚による息切れや疲労、口渇に効果があります。
【太渓(たいけい)】
足首内側に位置し、腎経に属するツボです。体の陰を補うことで、息切れや口の乾き、ほてりを改善します。
おわりに
息切れは、体のエネルギーや血液の流れが滞ることによって引き起こされることが多く、東洋医学や鍼灸治療は、これを整えるための有効なアプローチです。鍼灸を通じて気や血の巡りを改善し、息切れの原因となる臓器のバランスを整えることで、症状の軽減や予防が期待できます。また、適切な食事や生活習慣の改善もあわせて行うことで、息切れに対する根本的な対処が可能となります。