メニエール病とは
メニエール病は、内耳(耳の奥の部分)がむくむことで「内リンパ水腫」と呼ばれる状態になり、主に激しいめまい、難聴、耳鳴り、耳が詰まる感じ(耳閉感)などの症状が繰り返し起こる疾患です。30から50歳代の女性にやや多い傾向があります。
主な症状
突然発症する回転性の激しいめまい(ぐるぐる回る、ふらふらする)
低音域が聞こえにくくなる難聴
低音の耳鳴り(「ゴーッ」という音など)
耳が詰まった感じ(耳閉感)
めまいに伴う吐き気や嘔吐
症状は片耳に出ることが多いが、進行すると両耳に出ることもある
めまいの発作は10分から数時間続くことが多く、発作が治まると難聴や耳鳴りも一時的に改善する場合がありますが、症状を繰り返すのが特徴です。
原因
内耳にリンパ液がたまって圧が高くなることで、聴覚やバランス感覚をコントロールする蝸牛や三半規管の働きが障害されて発症します。なぜリンパ液がたまるのかは明確には分かっていませんが、ストレス、過労、睡眠不足、几帳面な性格、精神的要因などが関与すると考えられています。
メニエール病に対する鍼灸治療
鍼灸治療は、メニエール病の症状緩和や再発予防が期待できます。
期待される効果
自律神経の調整
鍼灸は自律神経のバランスを整え、身体の代謝や内耳のリンパ液循環を正常化することが期待されています。自律神経の乱れがメニエール病の発症や悪化に関与するため、鍼灸による調整が症状の軽減につながると考えられています。
内耳の血流改善
鍼刺激によって顔や耳周辺、首・肩の血流が促進され、内耳のリンパ液の代謝が高まり、むくみの改善が期待できます。
症状(めまい・難聴・耳鳴り・耳閉感)の緩和
実際の臨床報告や研究では、めまい症状の改善が多くの患者で見られ、難聴や耳鳴りにも一定の効果があったとされています。
鍼灸治療
施術部位
耳周囲のツボ(翳風・耳門・聴会・聴宮など)や、頸部・肩部のツボ(天柱・風池・完骨など)、さらには全身の経穴を組み合わせて施術します。
全身調整
東洋医学の観点から、腎や肝の機能を調整し、身体全体のバランスを整えることを重視します。
生活習慣指導
ストレスや過労、睡眠不足などの再発要因に対し、生活指導と併用して鍼灸治療を進めていきます。
臨床報告
日本鍼灸医学会の研究では、30例中ほぼ全員でめまい症状の改善がみられ、難聴は47%、耳鳴りは80%で有効とされています。
実際に耳鼻科治療で改善しなかった蝸牛型メニエール病が、鍼灸治療で耳のつまり感や耳鳴りが消失したという報告もあります。
急性期の対応
急性期は医療機関での治療優先しましょう
急性の強い症状がある場合はまず耳鼻科など医療機関での治療を受け、鍼灸は補助的に併用するのが推奨されています。
まとめ
メニエール病は、内耳のむくみによって繰り返し激しいめまいや難聴などを引き起こす疾患です。ストレスや生活習慣が発症・悪化に関与するため、治療とともに生活の見直しが重要です。
規則正しい生活リズムを心がけ、睡眠を十分にとり、ストレスコントロールも大切です。
鍼灸治療は、メニエール病のめまいや耳鳴り、難聴などの症状緩和や再発予防に対して、自律神経や血流の調整を通じて一定の効果が期待されています。急性の場合は医療機関での治療と併用する形が一般的です。
再発予防や慢性的な症状の緩和としてとても有効です。