ジストニアとは
ジストニアとは、自分の意志に反して筋肉が勝手に緊張し、体がねじれたり不自然な姿勢や動きが続いてしまう神経の病気です。脳の中でも特に「大脳基底核」と呼ばれる運動を調整する部分の働きが乱れることで、筋肉が必要以上に収縮し、思い通りに体を動かせなくなります。
代表的なジストニアの症状は、
・首が勝手に横を向いてしまう「痙性斜頸」
・文字を書こうとすると手が震える「書痙」
・まぶたが勝手にピクピク痙攣する、開けにくい「眼瞼痙攣」
身体のどの部位にも起こり得ます。症状は特定の動作をするときほど強く現れることが多く、ストレスや疲労で悪化しやすい傾向があります。
原因ははっきりしないことも多いですが、遺伝的な要因や脳の機能的な異常、筋肉の日常的な過度の使用などが関連することがあるとされています。
治療にはボツリヌス療法や薬物療法、リハビリテーションが用いられ、日常生活の調整も大切です。
東洋医学で考える

《西洋医学》
「筋肉を適切にコントロールできず、意図しないねじれや緊張が起こる神経系の障害」
《東洋医学》
「筋肉をしなやかに動かすための気血の巡りが乱れ、肝の調整作用がうまく働かない状態」

東洋医学における“肝”は、自律神経のように身体全体の調和を保ちます。しかし、ストレスの蓄積、睡眠不足、怒り・焦りなどの感情に過度に負担がかかる事で肝の働きが乱れます。身体全体の調和が保てなくなり、特に筋肉をうまく緩めたり締めたりする調整が効かなくなり、意図しない動きが生まれます。また、肝の不調から生じる「内風」が生じる事で勝手に筋肉が動く、震える、ねじれるなどの症状が現れやすいと考えられます。
さらに、長期間の過労や慢性的な疲れ、加齢などによって“腎”の働きが弱ると、身体の根本的な生命力や神経系の安定性が低下すると考えられています。腎は脳や脊髄の働きとも関わるため、神経系の不調が背景にある症状とは密接な関係を持ちます。
ジストニアは東洋医学的に
・肝の失調(自律神経・筋肉の調整不良)
・内風の発生(不随意運動)
・気血の滞り(こわばり・硬さ)
・腎の弱り
が複雑に重なって起こると捉えられます。
西洋医学的な鍼灸のアプローチ

鍼灸は、神経の乱れと筋肉の過緊張に対して、体の働きを穏やかに調整していきます。。鍼を打つことで筋肉のセンサーが刺激され、過剰に緊張している部分がゆるみやすくなります。また、鍼の刺激は脊髄や脳に伝わり、興奮しすぎた神経を落ち着かせる作用があるとされています。
自律神経にも働きかけ、ストレス状態で高まりやすい交感神経を抑え、身体を休ませる副交感神経を高めストレスや疲労がジストニアの悪化につながることを防ぎます。遠くのツボを使う施術では、脳が「身体の位置」や「動き方」を正しく感じ取りやすくなり、動きのクセを改善する目的で神経の走行をふまえ行います。
東洋医学的アプローチ

【肝へのアプローチ】
肝の働きを整える経穴を中心に、自律神経のバランス調整を目的としたツボを選び、身体全体の“巡り”を改善させていきます。これにより、過剰になっている筋緊張を徐々に落ち着かせ、不随意的な動きの原因となる「内風」を鎮めやすくなります。また、筋肉の硬さや血流の悪さが強い場合には、局所の筋緊張を緩和する施術も行います。
【腎へのアプローチ】
長期的な疲労やストレスで腎が弱っている場合は、生命力・回復力を底上げするツボを加え、神経系の安定性を高めることも重要です。これらの施術によって、力が抜けにくい、思い通りに動かない、同じ筋だけが過剰に収縮する、といったジストニア特有の症状に対して、身体の働きを穏やかに整えることを目指します。
まとめ

鍼灸は即効性だけを求める施術ではなく、「調整力そのものを回復させる」ことに長けた治療法です。継続的な施術によって、筋肉や神経の過敏性が落ち着き、日常生活での動きやすさ、疲れにくさの改善がみられます。ジストニアのように複雑な背景を持つ症状こそ、全身を一体として整えていく鍼灸が有効なアプローチとなります。
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