肩凝りの原因とは?
今までのコラムで肩凝りの診方と治療方法をお伝えしてきました。
肩凝りは誰もが経験し得るとても不快な症状であるにも関わらず、整形外科領域では未だに明確な原因が分からず、効果的な治療が出来ていません。
鍼灸領域では、トリガーポイント療法と言う肩凝り症状の発生源に対する治療が確立されていて効果的な治療ですが、それでもすぐに再発してしまう事があります。
肩凝りの根本的な原因を考えるにあたって、鍼灸では東洋医学という診方があり、前回までのコラムでは、肩凝りの原因となる5つの体質と、経筋という連結がある事をお伝えしてきました。
このように東洋医学的な視点で身体を見て治療していくと、肩凝りが改善し、なおかつ再発しづらくなってきます。
しかしこの経筋と言うのは経験的で概念的な面があり、解剖学的にも存在しているものではないため、例えば悪化させている要因や治療ポイントが分かりづらいのが難点です。
新たに解明された肩凝りの原因
ですが最近この経筋が解剖学的に解明されてきました。それが筋・筋膜のつながりです。
これまでは例えば肩凝りでも首肩の筋肉をそれぞれ個々で考えていて、どの筋肉に原因があるのかを見つけ、治療するのが主流でした。
しかしこの筋・筋膜の繋がりが分かってきた事で、経筋という考えが証明されたと同時に、治療ポイントや悪化させる要因なども分かりやすくなりました。
例えば肩凝りの原因となりやすい筋の1つである僧帽筋は、肩の三角筋、手や手指を伸ばす筋肉に連結しています。
ですので例えば手の筋肉を使いすぎたり腱鞘炎の既往歴があると、肩凝りが起こりやすくなり、手の筋肉を治療すると改善してくる事が良く見られます。
では肩凝りに関連する筋肉の繋がりはどんなものがあるのでしょうか?
肩凝りに関連する筋・筋膜の繋がりとは?
その前にまず肩凝りを引き起こす直接の原因となる筋肉はどんなものがあるのでしょうか?
主要なところでは、僧帽筋(そうぼうきん)、肩甲挙筋(けんこうきょきん)、頭板状筋(とうばんじょうきん)などが挙げられます。
次にそれぞれの筋肉に連結する筋肉をご紹介します。
①僧帽筋
僧帽筋は首の後ろから背中、肩の上など幅広い筋肉であり、最も症状が出やすい筋肉でもあります。
僧帽筋に連結する筋・筋膜は、肩関節を動かす三角筋(さんかくきん)、手や指を動かす前腕伸筋群(ぜんわんしんきんぐん)と言った筋肉になります。
ですので例えば、五十肩や腱鞘炎の既往歴があったり、日常や仕事で細かい作業や指先を良く使う方は、三角筋や前腕伸筋群が硬くなっているため、僧帽筋の緊張を引き起こし、硬さと制限が出てくるため、肩凝りの症状を引き起こします。
ですので肩凝りを根本的に治療していくには、このような筋肉をチェックし治療していく必要があります。
②肩甲挙筋
肩甲挙筋は首の横から肩甲骨に走っている筋肉で、首を回す、横に倒す、肩甲骨を動かすなどの働きがあります。
この肩甲挙筋に連結している筋・筋膜は、肩の動きを安定させる棘上筋(きょくじょうきん)、肩や肘を伸ばす上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)、小指を動かす小指球筋(しょうしきゅうきん)があります。
棘上筋は肩の腱板断裂などのケガや肩関節の使いすぎ(野球肩など)など、上腕三頭筋は何かを押す動作や腕枕による圧迫など、小指球筋は何かを握る動作などを過剰に行うことで硬くなってしまい、結果的に肩甲挙筋に負担をかけます。
③頭板状筋
頭板状筋は後頭部から首の横を通り背骨に付着する筋肉です。首を回す、横に倒す、頭を後ろから支えるなどの働きがあります。
この頭板状筋に連結している筋・筋膜は、胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)、肋間筋(ろっかんきん)、腹斜筋(ふくしゃきん)などです。
胸鎖乳突筋は不良姿勢で長時間PC作業したりスマホを見ている、あるいは持続的な精神的ストレスを受けていると硬くなります。むち打ちの既往でも硬くなっている事が多く見られます。
肋間筋や腹斜筋は体が丸まってる姿勢や交感神経が強くて呼吸が浅いと硬くなります。まれに内臓の不調が影響する事もあります。
これらの筋肉が硬くなると結果的に頭板状筋に負担をかけてしまいます。
肩凝りの根本的な治療法として…
今回は肩凝りの原因となる代表的な筋肉とその筋肉に負担をかける筋肉、そして日常で起こり得る負担負荷についてお伝えしました。
肩凝りと言えど首肩や辛い部分だけを治療してもなかなか改善しません。
ですので根本的な原因として筋・筋膜の連結についてご紹介しました。
トリガーポイント療法、東洋医学、そして筋・筋膜の連結、このようにあらゆる面から身体を診て治療していく事で、肩凝りの根本的な解決を行なっていく事ができます。