【肩こりは重要な自覚症状である】
身体の苦痛は重要な自覚症状であり、そこに病気が発生し、体調が変化している事を知らせるアラームサインです。
肩こりもその一つです。
肩こりは病気や体調不良と合併して現れる事もありますし、それらの引き金となる事も多く見られます。
難病指定されている線維筋痛症なども、肩こりから筋肉の硬化が進展していく事もあります。
そして現代医学(特に整形外科など)ではこの肩こりを治す事を苦手としています。と言うのもはっきりとした原因が無いために有効な手段がなく、また肩こりだけでは命に関わる事もないと軽視しているからです。
【肩こりはどうして起こるのか?】
この答えは、未だ整形外科や心療内科領域では明確になっていません。
しかし精神的ストレスや過用による筋肉疲労(姿勢の悪さなども含まれる)、自律神経失調症などが引き金となり、交感神経が過緊張となり、その結果として末梢血管の収縮、筋肉の血流障害、うっ血、浮腫などが起こります。
そしてその結果トリガーポイントという塊が形成されて、そのトリガーポイントが痛みや重だるさ、交感神経過緊張症状など、肩こり特有の症状を引き起こすと考えられています。
時に痛みや重だるさだけでなく、頭痛やめまい、吐き気、不眠などを引き起こす事もあります。
【肩こりを治す方法とは?】
整形外科などでは原因が明確になっておらず、そのために有効な治療手段が無いのが現状です。
しかし視点を変えて東洋医学で考えてみると、その原因は明らかになっています。
東洋医学ではまず体質を考えます。その人がどういう体質であるために、症状が起きているのか。そこを突き止めて治療していく事で、症状が改善していくのです。
特に肩こりの原因には大きく6つの体質が考えられます。これについては次回のコラムで詳しくお伝えしたいと思います。
さて東洋医学では実は体質だけでなく、もう1つの考え方があります。それが経筋(けいきん)と呼ばれるものです。
皆さん、経絡と言う言葉は聞いた事があるかもしれません。気というエネルギーが巡る路線のようなものです。
しかし実は全身の流れはもっと細かく分かれていて、その1つに経筋というものが位置付けられています。
経筋は表層の流れで、主に筋肉の連結を示しています。
この経筋上のどこかで詰まりが起こると、その経筋に沿って同様に詰まりが起こったり痛みが起こってしまいます。
肩こりも同様に、肩や首の筋肉の詰まり(凝り)だけを見ているとなかなか根治しませんが、この経筋上を丹念に検索していくと、肩とは別の部分にも凝りがあり、そこを流す(緩める)治療をすると、肩こりも改善していきます。この治療が肩こりの根治につながっていきます。
【肩こりの原因となる部位は?】
東洋医学には経筋と言う、筋肉の連結を見ていく治療があることはお伝えしました。
では実際に肩こりに関連の深い経筋は、どのようなものがあるのでしょうか?
肩こりに関連の深い経筋は、足の太陽経筋、足の少陽経筋、足の陽明経筋、手の太陽経筋、手の少陽経筋、手の陽明経筋という6つの経筋が主に関わっています。
そして肩こりの症状が特にどの辺りにあるのか、どのような動きで悪化したり楽になるのか、首肩以外の部分の痛みや不調はあるのか、あるとすればどこにあるのか、と言った事を参考にして、問題のある経筋を見極めていきます。
実際には症状や動きなどを確認したのち、ある程度経筋を絞り込んでから、その経筋上を丹念に検索していきます。
首肩周りにはもちろん問題があることは多いのですが、根本的な原因になっている部分は離れて存在している事も良くみられます。
ですのでその原因部位を見つけるべく、丹念な触診が必要不可欠となってきます。
例えば首の後ろの凝りが強ければ、体の後面に分布する、手や足の太陽経筋を主に探っていきます。
同様に首の側面や肩甲骨の上方に症状があれば、身体の側面に分布する、手や足の少陽経筋を探ります。
首や胸の前面に症状があれば、身体の前面に分布する、手や足の陽明経筋を探ります。
このように触診によって検索していくと、指や腕、足や骨盤周り、お腹などに原因がある事も良くあります。
また実際には更に体質などを見極めて、不調のある内臓はどこかを考慮し、その内臓に関連した経筋を探っていく事もあります。
肩こりの原因が内臓の不調にあった!と言う事も良くある事です。
【経筋から見た肩こりの治療とは?】
さてこのような順序を経て原因部位が明らかになれば、あとはその部分の詰まり(凝り)を流して(緩めて)いきます。
特に鍼治療には詰まりを流す作用があり、原因となっている部分を緩める事ができます。
そしてその部分を緩める事で経筋も正常に機能(経筋の分布上の緊張が解ける)し、肩こりの不快な症状が改善していきます。
とにもかくにも首肩にとらわれず、くまなく触診していく事が治療のキモとなります。
さて今回は東洋医学から見た肩こりの原因として、経筋の考え方をお伝えしました。
次回のコラムではもう1つの原因である、体質からみた肩こりについて詳しくお伝えしたいと思います。